イントロダクション
あの場所を過ぎると 懐かしくて恐いところでした

妄想が現実となり得る、不思議な、時間のない場所に存在する映画だ。
それは、まさに江戸川乱歩の作品を彷彿とさせる。
-イタリア ウディネ・ファー・イースト映画祭

深川栄洋と俳優・西島秀俊が誘う、日常の、その先にある「幻想の世界」

多くの熱狂的な深川フリークを生んだ前作『狼少女』の深川栄洋が新たに挑んだ幻想的世界、それが『真木栗ノ穴』だ。
原作は、四谷ラウンド文学賞を受賞し、評論家に絶賛された女流作家・山本亜紀子による異色の小説「穴」。
その独特な小説世界に、鮮烈さとユーモア、匂い立つエロティシズムを加え、江戸川乱歩や夢野久作、京極夏彦を彷彿とさせる「昭和モダン」の薫りがたちこめる、魔可不思議な魅惑の物語をつくりあげた。主人公の真木栗勉を演じるのは、数多くの映画に出演し、日本映画界を代表する俳優のひとり、西島秀俊。深川監督の映像と確かな演出力に魅了された西島秀俊は、夢とうつつの世界を往き来する真木栗を、コミカルかつ、情感豊かに、その愛すべきキャラクターを見事に演じている。
隣室に越してくる妖しい女を演じるのは『夕凪の街 桜の国』の好演が印象に残る粟田麗。清楚さの中に漂うエロティシズムが白い日傘に映え、まるで古き良き日本映画のヒロインのようだ。そして、キムラ緑子、北村有起哉、松金よね子、田中哲司、利重剛らの実力派が彩りを添える。
古くから多くの文豪が住み、さまざまな小説や映画の舞台となった、古都・鎌倉。その一角にひっそりある、緑と水に濡れた釈迦堂切通し。現実と幻想の境界であるかのような、この場所を舞台に、本のページをめくるように物語は、妖しく展開し、白日夢のような世界に誘っていく。


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